私の働いている施設に
63歳の女性の方がいらっしゃいます。
ご入居者様? ではなく、月に
8回の夜勤をこなし、
その他にも
遅番、早番をこなすれっきとした
社員の方です。
この施設の定年は
60歳。 でも、
再雇用制度があります。
定年というのは、年齢的に見ても
体力が低下する歳だという
事もふまえて、定められている
制度だと思われます。
何故そんなにも働いているのか・・・
その方の夜勤明けの帰りと、私の昼の休み時間が
たまたま合って、その方はポツリ、ポツリとご自身の事を
話し出されました。
『私の孫ね、重度の障害者なんだよ・・・』と切り出され、
『障害』と言う言葉に思わず身構えてしまいました。
しかし同じ
『障害』とついても、重度の
『障害』は私の
想像を遥かに超えていました。
その方の
娘さんは、お子様を身篭った時に
『逆子』だった
そうです。
しかし産婦人科で
通常の出産方法をとってしまった為、
結果、
体が二つ折りの状態でお尻から出てくる出産に
なってしまい、
『低酸素脳症』となってしまい、重度の
『障害』を負ってしまい、寝たきりの状態になってしまった
そうです。
『あのヤブ医者が・・・』と、その方は本当に悔しそうに
呟かれました。
逆子が
帝王切開になると言う事は、私でも知っていました。
何故なのかはよく解りませんでしたが、こういったケースが
あるんだと、改めてその
リスクの高さに驚きました。
『だからね、私はまだ働かなくちゃいけないんだ』
その方は遠くを見ながら仰いました。
もしも・・・
自分の娘がそうなったら・・・
出産の痛みは想像を絶します。
その上、その出産が逆子で体が二つ折りの状態で
胎児が産道から出てくるなど、きっと
想像を絶する苦しみだと
思います。
私の娘がそんな思いをしたら・・・
そして産まれた子に障害が残ったら・・・
その方の
深い悲しみと、
強い憤りがとてもよく
解りました。
60歳を
過ぎても尚、
過酷な労働条件の元で働いている
その方。
とても辛いだろうと思っていたのですが、その方は
最後に
笑顔でこう仰りました。
『でもね、あの子(お孫さん)の笑顔を見ていると、
本当にこの子は天使だって思えるのよ。本当に天使だよ』と。
すごい。。。
すごいとしか私には思えませんでした。
深い深い悲しみと苦しみを乗り越え、更に我が身を犠牲に
して生きてきた方はそのお孫さんを
『天使』だと心から仰って、
今の現状を産科医のせいにするでもなく、
全てを受け入れ
そして一生懸命に生きているのです。
『天使』と共に。。。
共に生きる。 楽しく生きる。
そして
全てを受け入れる。。。
その思いに私は自分の事が
恥ずかしくなりました。
その言葉に
横っ面を叩かれた気持ちでした。
私の手元にも
『天使』がいます。
しかし、その子を
『天使』と見るか、
『堕天使』と見るか・・・
それは全て
私の心が決める事です。
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